宮園身障二種免協会

UDタクシーの普及と身障タクシードライバー

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身障タクシードライバーにとって出来る介助と出来ない介助

ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)の普及

2017年10月23日、トヨタ自動車から待望の次世代タクシーであるJPN-TAXI(ジャパンタクシー)が発売されました。このタクシーの最大の特徴は、ユニバーサルデザインを採用し、車イスユーザーがスロープを使って車イスのまま乗車できる設備を持っているところにあります。高齢化が進む日本のバリアフリーを推し進めるユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)として、急速に導入が進んでいます。

しかし我々身障タクシードライバーにとって、車イスのお客様をスロープで押し上げる介助は困難、または危険を伴います[1]。また、車内で屈んで車イスをベルトで固定する作業は、足が不自由であれば屈めなかったり、手が不自由であれば締める力が足りなかったり[2]して、安全な運行に支障します。このような場合、乗車の申し込みをお断りすることになるのでしょうか?

[1] 押し上げられないだけでなく、スロープを踏み外せば車イスごと転落の恐れがあります。

[2] ベルトのアンカーを床に取り付け、人の力でベルトをキツく締めて固定します。

障害者差別解消法

合理的な配慮が求められている

トヨタ JPN-TAXIの写真

障がい者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は平成28年4月1日からスタートし、障がいのある人[3]に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止しています。タクシーであれば、障がいを理由に乗車をお断りするなどが該当します。

またこの法律は、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること=合理的配慮を求めています。合理的配慮とは工夫をして要望に対応することです。

[3] ここで対象とする「障がいのある人」とは、障害認定の有無にかかわらず日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てが対象です。

車イスのまま乗車を希望された場合
車イスのお客様をスロープで介助している写真

身障タクシードライバーがUDタクシーに乗務して、車イス利用のお客様から車イスのまま乗車の要望があったとします。しかしクルマは対応可能でも、肢体不自由等の身障タクシードライバーにはスロープ乗車の介助は出来ない、または事故に結びつく可能性が高く、お客様と私たち双方に危険を伴います。また、例え乗車時に周囲の協力を得て乗車できたとしても、降車地で同じような協力が得られるとは限りません。
そこで、お客様には座席への移乗を提案したり、車イスのまま乗車出来ない理由を説明して理解を得るように努めますが、それでもご理解頂けない場合は乗車の申し込みをお断りせざろうえなくなります。

介助(配慮)する側の身体能力を超えた要求は、負担が重すぎない範囲を超えているのではないかと思われます。障がい者に限らず、健常者であっても高齢であったり、小柄であったりして能力(体力)を超える介助を要求された場合も同じです。周囲の協力を得るとしても限度があります。

この場合、お客様の障害を理由に差別して輸送をお断りするのではありません。運送約款の第4条③[4]に該当する正当な輸送をお断りする理由に合致すると考えます。合理的な配慮の範囲を超えた「工夫をしても出来ない」行為の要求で乗車拒否とされても納得できません。

[4] 一般旅客自動車運送事業運送約款 第4条 運送の引き受け及び継続の拒絶 ③:当該運送に関し、申込者から特別な負担を求められたとき。

車イスユーザー対応だけがユニバーサルTAXIではない

JPN-TAXIから高齢のお客様と娘さんが降車している写真

UDタクシーというと、車イスのまま乗車できる点に注目が集まりがちですが、タクシーには色々なお客様が乗車されます。高齢の方・杖やシルバーカーを利用する方、視覚障がい者・聴覚言語障がい者・内部障がい者・知的障がい者、他にも精神障害者や難病の方など様々です。私たち身障タクシードライバーは、障がい当事者としてお客様の気持ちを理解した対応が出来る立場であり、これらのお客様に快適にタクシーをご利用頂く自信があります。
タクシー業界のスタンダードである「ユニバーサルドライバー研修®」を受講するなど、自分と違った種類の障がいへの対応を学ぶ努力もしています。

タクシードライバーをこころざす方へ

JPN-TAXIのテールランプとユニバーサルデザインタクシーマークの写真

いずれ日本のタクシーの殆どがユニバーサルデザインタクシーに代わり、乗降にお手伝いが必要なお客様の割合も増えていくでしょう。
私たち身障タクシードライバーは、その障害の種類や程度によって「出来るお手伝いと、出来ないお手伝い」がありますが、それによりタクシードライバーとしての就業を否定されることがあってはなりません。

年齢や性別、宗教や文化、障がいの有無にかかわらず、全ての人が社会参加できる社会がユニバーサル社会ですあり、タクシーを利用する人にとっても、タクシーで働く人にとってもそうでなければならないと思うのです。


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