全国で初めて 身障のタクシー運転者第一号 本社でスタート
右脚の不自由な白井仁志さん
<社報みやぞの NO.145 1975/3/30発行 より>
3月11日付の朝日新聞首都圏版をご覧になった方は、すでにご存じだと思うが、ことしの10日当社に入社した白井仁志さんは、右脚の不自由な4級の身体障害者だ。高校1年の時北海道の山でスキーをして転倒、右脚を骨折したが、手術の失敗から膝の関節が全く動かなくなってしまった。
それから白井さんの人生に対するというとちょっとオーバーになるが、好きな自動車に対するチャレンジが始まる。左脚だけの運転操作を訓練し、昭和39年スクーターを左ブレーキに改造して免許をとり、半年後にはマツダのクーペを改造して軽自動車の免許をとった。その後限定解除を重ねながらパワーアップして、普通乗用車の免許をとり、これまでに8台のマイカーを買い換え、ラリーにも出場して、入賞、いまもA級ライセンスを持っている。
ことしの2月から警視庁は二種免許の合格基準をすこし緩和して、①パンクを独力でなおせる。②事故の場合、客を安全に誘導したり救助できる③客の荷物を持ち運びできる、などの条件を満たせば、身体障害者でも合格させることになった。白井さんは即座に受験、今月5日みごとにパスした。東陸事の吉野旅客課長も大変喜んでくれた。
明朗な性格の白井さんはそれまで他の職業についていたときには、身体障害者としてのハンディをほとんど意識しないで出来たが、タクシー運転を志願して都内60社にあたり、身障者としてその壁の厚いのをはじめて知らされたと述懐する。つまりノークラッチ車にしか乗れないことがその理由だった。思いあぐんだ末、4トンのノークラトラックを購入して、車両持ちこみで輸送の仕事でもと考えていたところ、東旅協からの橋渡しで当社に入社することになった。
11日の朝日の紙上に白井さんの記事がのるや、俄然反響をよんでくるま好きの身障者の人びとから、白井さんの自宅に問い合わせの電話がひっきりなしにかかるという。
現在、白井さんは東京無線の講習もすませ、ノークラ車の改造を持っている。今月のうちには乗車勤務につくことだろう。
身障者の希望を担ったタクシー運転者第一号。新しく切り開いた道での成功を祈ると共に、白井さんの今後を暖かく見守っていこう。
ちなみに、白井さんのタクシー運車スタートを契機として、4月1日から警視庁は都内の試験場のうち二カ所に、ノークラッチ車を導入して、身障者の人の希望に応えることになった。
12月分平均給与 | |
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(本採用完全資格者) | (前年同期) |
本 給 135,225(71.19%) | 88,809 |
諸手当 14,330(7.72%) | 11,490 |
能率給 39,160(21.09%) | 50,239 |
合 計 185,715 | 150,537 |