タクシー運賃制度
誰でも、なるべく安い運賃でタクシーを利用したいのは当然です。けれども威勢のいい強面の人が「安くしろ!!」とすごんだら値引きされ、反対に弱そうな人に割高な運賃が請求されたとしたら…、双方の力関係で支払う金額が変わるようでは安心して利用できず、公平性が求められる公共交通機関を名乗ることはできません。水道料金や電気料金に値引きを求めても無理なように、タクシー運賃も電車やバスと同じく値引き販売は認められていません。
このことは、タクシーやバスなど旅客自動車運送について定める道路運送法[1] に、お客様が不当な差別的取り扱いを受けたり、業者間で安全性をないがしろにした価格競争(値引き合戦)にならないように、タクシー運賃の決め方の基準として明示されています。
運賃を決めるには「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」となっていて、国土交通大臣の認可を受けなくてはならないので、タクシー会社が結託してカルテルを結んで高い運賃を設定することはできませんし、割引券の発行や特別値引きセールなども全てルール違反で、誰が乗ってもメーターに表示された運賃[2]が請求される仕組みです。
POINT
- 誰が乗っても同一運賃となる仕組みが法で定められている
[1] 【道路運送法】第九条の三 一般乗用旅客自動車運送事業者は、旅客の運賃及び料金(旅客の利益に及ぼす影響が比較的小さいものとして国土交通省令で定める料金を除く。)を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 国土交通大臣は、前項の認可をしようとするときは、次の基準によつて、これをしなければならない。
一 能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること。
二 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと。
三 他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること。
四 運賃及び料金が対距離制による場合であつて、国土交通大臣がその算定の基礎となる距離を定めたときは、これによるものであること。
[2] 【メーターに表示された運賃】走行距離と時間から運賃を算出する「距離時間併用運賃」のことで、メーターに表示された額が支払金額です。これとは別に、一部ですがメーターを使わない算出方法も認められていて、その一つに「時間制運賃」があります。TV撮影などで、走行距離は1kmにも満たないのに拘束時間が極端に長くなる場合に、営業所における特約として適用されます。ですから高速道路を使って短時間に長距離を移動するので時間制の方が安くなるからと、流しで止めたタクシーに申し込んでも受け付けられず、そう都合よくはいきません。
他にも、空港などと一定の地域間を事前に定額を定めて運送を引き受ける定額運賃(東京無線の場合:羽田定額・成田定額・東京ディズニーリゾート定額)があります。
地域ごとに異なるタクシー運賃
例えば、同じ東京でも23区内と多摩地域では地価や物価、タクシーの使われ方も異なるので、適正な原価に適正な利潤を加えて算出されるといっても、日本全国どこでも同じ運賃では不都合が生じます。
地域により実情は様々なので、全国を99ブロック(H31.1.1現在)に分け、それぞれに運賃が設定されています。
関東運輸局 | 16ブロック |
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北海道運輸局 | 15ブロック |
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近畿運輸局 | 14ブロック |
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九州運輸局 | 12ブロック |
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東北運輸局 | 10ブロック |
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中部運輸局 | 8ブロック |
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四国運輸局 | 8ブロック |
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北陸信越ブロック | 7ブロック |
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中国運輸局 | 7ブロック |
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沖縄(総合事務局) | 2ブロック |
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POINT
- 99ブロックに分けたエリアごとに実情に合わせた運賃が設定されている
これを「同一地域同一運賃」と呼びますが、ちょっと待って!
「それってカルテルじゃないか!」
「運賃の違うタクシーが走っているじゃないか!」
という声が聞こえてきそうです。
そこには「自動認可運賃」や「公定幅運賃」という仕組みが働いているのですが、それは先のページで説明します。
運賃ブロック ≠ 営業区域
タクシー需給量の調整を図るために営業区域が設定され、お客様の乗車地点(発地)・降車地点(着地)の少なくともどちらか一方が営業区域内にないと、タクシーは運送を引き受けることができません。[3] (道路運送法:第20条に禁止行為として規定)
私達の営業所は「特別区・武三地区(東京23区・武蔵野市・三鷹市)」内の東京都杉並区にあるので、[特別区・武三交通圏]が営業区域となり、運賃ブロックの「特別区・武三地区」と一致します。
しかし、このように完全一致するとは限らず、運賃ブロック「多摩地区」は、営業区域では[北多摩交通圏][南多摩交通圏][西多摩交通圏]と分かれるなど、かなりややこしいです。
[3] もしもこの制度が無かったら、人口=お客様の数が圧倒的に多い東京23区内に、周辺地域のタクシーが全て集まってしまう可能性がでてきます。すると、大都市は空車タクシーがたくさんいるので便利ですが、周辺に全くタクシーがいない空白地帯が生じてしまうことがあり得ます。
営業区域外にお客様をお送りした後のタクシーは、[空車]表示で営業区域に向けて走行していいます。その車に手をあげて呼び止め、地元の行き先を告げると断られるのは乗車拒否ではありません。中長距離をお送りした後で、いつもなら空車で戻らなくてはならない帰路に営業区域内まで乗車いただくお客様が乗車された場合の乗務員はニコニコで、こういった往復ビンタは大歓迎です!