特集『UDタクシー乗車拒否問題改善に取り組む会社』として
NHKが宮園自動車(株)杉並営業所を取材
社報みやぞの 2020春号
<再刊第124号/通巻第315号 より>
• 身障タクシードライバーとして取材を受けて
JPN TAXI に関わる全ての人と意見交換が必要
宮園自動車(株)杉並営業所 加藤 輝夫
JPN TAXI(ユニバーサルデザイン<UD>タクシー)は車いすのままでも利用できますが、少し手順が必要とあって一昨年の営業開始時には、車いすのお客様への乗降サポートが十分でなかったり、乗車拒否が起きたりすることがありました。今でもこの問題は取り残されているようです。今回、撮影前の打ち合わせがあり、そこから乗車拒否解消の手掛かりとして期待できる解決方法の一つが見えてきました。
*
昨年12月12日(木)、JPN TAXI 研修を取材のNHKからは、牧陽子ディレクター、電動車いすを使う千葉絵里奈リポーター、当社からは身障二種免協会※から伊藤会長と佐々木幹事、筆者(加藤)の3名が出席しました。進行は採用教育室の湊敏明さん。
牧さんから、乗務員また身障者の立場での本音を聞きたいとの要望を受け、私も意を決して言わせていただきました。
- 宮園のほとんどの乗務員は、障がい者・身体の不自由な高齢者・病人・妊婦さんなどに親切に対応し、コミュニケーション第一に努めていること。私は乗車拒否をしたことはなく、車いすのお客様には丁寧に対応し、手助けして喜ばれていること。
- 乗車拒否は設置の工程の複雑さ、横出しスロープの設置場所と車いすの種類の多さなどに起因しています。研修で練習しても営業中に車いす乗車のお客様に出会うことが少なく、中には2年間一度も車いすのお客様を経験したことが無い乗務員がいたりして、パニックを起こした人もいたのではないかと思う(宮園の皆さんは別ですが)。
次に、千葉さんはUD車に乗車拒否を受けたり、乗車作業が上手くできなくて利用できなかった経験を話され、その流れから次のような会話がやり取りされました。
- 千葉R「運転手さんに作業手順を教えたら失礼かしら?」
- → (加藤:そうか我々乗務員より利用者の方が何回も経験されてる!)
- 加藤「教えてもらえればありがたいですね」二人で顔を見合わせました。
- → (加藤:車いすの種類は多いのに、お互いが聞いたり教えたりはダメだと思ってたのか)。
- 牧D「JPN TAXIはすでに走っているし、オリンピック・パラリンピックに向かって何か良い方法はないかしら?」
- 湊「コミュニケーションですね」
- → (加藤:そうか!コミュニケーションだ)。
- 加藤「NHKさん、一肌脱いでもらえませんか?」思わず言葉が出ます。
- 牧D「当然やりますよ!」
さらに千葉さんから「加藤さん、足を見せてください」にはビックリ。たまたま義足が古くなり、新調したばかりだったので「きれいなおみ足」を見せることができホッとしました。彼女は観察力があり、電動車いすの操作も見事で、パラリンピックのリポーターでの活躍が楽しみです。
*
後日、実車研修や路上で千葉さんが乗車する様子を撮影、今回の話し合いからの気づきが放送されると大反響を呼び、関東圏のみの放送予定が全国でも、そしてラジオでもと、繰り返し放送されたのです。
今回の取材は、湊さん、淡田さん(車いすの設置自己ベスト2分10秒)はじめ宮園の皆さんの走力の賜物です。「ワンチーム宮園」やったね!!
UDタクシーはまだスタートして2年。これからが本番。皆で取り組んでいきましょう。
- NHK取材は左記3回放映、放送されました
- 1月21日 NHK総合テレビ午後6時
- 『首都圏ネットワーク』
- 1月27日 NHK総合テレビ午後6時30分
- 『おはよう日本』
- 2月17日 NHKラジオ第1午後10時
- 「NHKジャーナル』
※ 宮園身障二種免協会(http://mzsn.tokyo/)とは
宮園で働く身障タクシー乗務員の自主活動グループで、今年で設立から44年経過します。取材を受けた加藤乗務員もメンバーとして活躍しています。
身障乗務員と健常乗務員が当たり前に共生する当社の環境は、乗車拒否問題を解決して目指す理想的な姿として注目され、取材に至った経緯があります。
• 入社3カ月の新入乗務員からひと言
移動手段として、平等に利用できる環境を整えることが大事
宮園自動車(株)杉並営業所 伊藤 淳二
この度NHKで車いすご使用のお客様に対応するための取り組みとして、研修の様子を取材に来られました。
JPN TAXIの車いすでの乗車に必要なスロープ設営を始め、20数項目の手順を再確認しましたが、やはり慣れないせいもあり、設営完了までに12、13分の時間がかかりました。
私自身ほんの2か月前にタクシーセンターにて設営研修を受講し、社内でも練習したにも関わらず、いざ1人でやってみると必要項目を忘れたり、手順を間違えたりと不安要素がかなり見られました。
このような不安に思う意識が、乗車拒否の原因の一つに挙げられると思います。また設営にかかる時間が気にかかるのも、要因にあるように思います。人の移動手段として、障がい者や健常者に関わらず平等に利用できる環境を整えることが、大事な課題であると感じます。
対策として、タクシー事業所に留まらず国をあげて問題改善に向けた法整備をお願いしたいと思います。今回の取材にあたり、実際に車いすを利用しているNHKの千葉さんとお話しさせていただきました。昨年のアンケートで、車いすご使用のお客様が乗車拒否を受けたとの回答は、約3割にもなるそうです。悲しい現状をうかがい私が思ったことは、一乗務員として出来ることから始めていこうと決意しました。
• 乗務歴24年のベテランドライバーからひと言
乗り降りはスペースを取らない後方からできればもっと良くなる
宮園自動車(株)杉並営業所 渡邉 邦久
「なぜJPN TAXIは車いすの私たちを乗車拒否するのか?」と問われ、ストレートな発言にドキッ!! きっとそのドライバーは「面倒だし、作業に自信がないし・・・・・・」と思ったのだろうか?
義父が血行障害で足を切断し、車いす生活をしていたが、きっと不安と心細さの中で日々暮らしていたのだろうと思うと考えさせられる。
安心、安全ですべての人に共通のサービスを提供する "「乗って良かった」をすべての人に"、このスローガンを基に最初の挨拶、優しい言葉づかい、少しの心くばりで車内にも良い雰囲気が作れると思う。これらの事にも車の運転のように慣れることで自信がつき、積極的になり、今後の仕事にもプラスになることは間違いない。
JPN TAXIの乗り降りが、横ではなく後方からできればもっと良いのでは? 狭い日本なので!
- « 2010年代
- 1
- 次 »