宮園身障二種免協会

モノごころヒト語り(UDタクシー)

トップ > アーカイブ > 2010年代 > モノごころヒト語り(UDタクシー)

モノごころヒト語り(UDタクシー)

便利さ乗せ、広がる共助

<日本経済新聞 2018年9月1日夕刊 >モノごころヒト語り

日本経済新聞 2018年9月1日 夕刊、共用品推進機構専務理事 星川安之さんのコラムに、当協会員の加藤輝夫さんが取り上げられました。

日本経済新聞2018/9/1夕刊 モノごころヒト語りの紙面の写真

通常料金で、誰でもが乗車出来るUD(ユニバーサルデザイン)タクシーのマークが付いた車を街で見かける機会が増えた。車内空間や乗降口が広いのが特徴で、高齢者やベビーカーを抱える親子連れなどが利用しやすい移動手段だ。

車椅子使用者は車椅子を終い座席に移乗するか、車椅子ごと乗るかを選択できる。横から乗り車内で方向を変えるタイプと後ろから乗り込むタイプの2種類がある。どちらも座席を折りたたみ、スロープをつたって乗車する。ベルトで車椅子を固定して、シートベルトを装着し準備が整う。

一連の作業を宮園自動車(東京・中野)の協力を得て体験させていただいたが、なかなか手ごわく、30分ほどかかってしまった。同社の担当運転手は講習をしっかり受け、平均8分半で準備、乗車可能となる。車椅子から移乗する人が多いため、イラスト付きの手順書を作りそなえている。

一方、限界もある。日本工業規格(JIS)に適応していない大型の車椅子は車内で回転できずベルトによる固定ができない場合がある。運転手としては乗ってほしい気持ちと共に、安全面を考慮すると断らざるを得ない場合もあるとのこと。何とか解決策が見つからないものかと思う。

宮園自動車のUDタクシーは43台で、その内の1台を障害のある加藤輝夫さんが運転している。加藤さんは1995年、交通事故で左脚下肢の4分の1を切断して失職。同社が障害のある人をドライバーとして募集していることを知り応募、以来23年間努めている。

同社が障害のある運転手の雇用を始めたのは法改正で身体障害者も二種免許証が取得できることになった74年の翌年。採用の条件や待遇で差別もなければ優遇もしない方針で、加藤さんも他のドライバーと同様にスロープ設置等の講習を受け、障害のある人の乗車時には可能な支援を行なっている。出来ない支援もあるが、今までにお客さんに文句を言われたことはなく、できない部分を手伝うことを申し出てくれるお客も少なくない

多くの場面で共生社会への実践が行なわれているが、どの場面でも支援する側、される側が一体となって初めて両者共通の目的が達成される。その一体感、同社では障害のあるドライバーが社員として加わった43年前から社内外で始まり、今に至っているのである。

(共用品推進機構専務理事 星川安之)


Contents【アーカイブ】

ページのトップへ戻る