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認可運賃の算出方法

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運賃は「総括原価方式」で算出されます

タクシー運賃は、「総括原価方式」によって「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えない」金額に設定されます。これは電気・水道・ガスなどの公共料金を決めるのと同じやりかたで、事業の運営に必要な経費を原価として見積もり、それを回収できる価格を設定します。
タクシー会社側からのメリットは、過大な利益は望めない代わりに大きな損失を生じることがないので、サービス向上に必要な中長期の設備投資などがやりやすいことがあげられます。

公共料金の行政関与の方法による分類
設定方法
国会や政府が決定するもの 社会保険診療報酬、介護報酬
政府が認可・上限認可するもの 電気料金、都市ガス料金、鉄道運賃、乗り合いバス運賃、高速自動車国道料金、タクシー運賃、郵便料金(第3種・第4種郵便物の料金等)
政府に届け出るもの 電気通信料金(固定電話の通話料金など)、国内航空運賃、郵便料金(第1種、第2種郵便物の料金等)
※ 電気料金、都市ガス料金の引き下げ改定
※ 鉄道・乗り合いバス運賃の上限価格の範囲内での改定
地方公共団体が決定するもの 公共水道料金、私立学校授業料、公衆浴場入浴料、印鑑証明手数料

(消費者庁ホームページより)

タクシー経営に必要な原価

総括原価の円グラフ

原価に占める割での最も大きいのが、乗務員の報酬(給料)など「人件費」です。タクシー事業は「典型的な労働集約産業」といわれる所以で、全体の7割以上を占めます。
次いで大きいのが、石油情勢の影響を受けやすい「燃料費」です。この二つで全体の8割を越えます。

他には「車両償却費[1]」も必須となるコストです。東京のタクシーは、古くは4年程度のサイクルで代替されましたが、クルマの品質が高くなったことで5~6年は現役で使われるようになりました。但しこれまでのコンフォートが200万円程度の車両価格だったのに対し、ジャパンタクシーは300万円を超え、これにタクシーメーターや無線機、その他諸々の営業に必要な架装を加えると、400万円[2] を越える高級車です。
また、クルマには車検など法定点検のほか、オイルやタイヤの交換など消耗部品の交換などメンテナンスが欠かせないので「車両修繕費[3]」がかかります。板金が必要な事故があれば膨らむことになるので、タクシー会社にとって事故を減らして経営を安定させることは命題となっています。また「保険(共済)料」も欠かせません。その他経費を加え総括原価が算出されます。

POINT
  • 営業に必要な原価+適正な利潤 = 総括原価

[1] 東京での役目を終えたタクシーは、程度の良いものは地方都市で第2の人生を送り、その後、再び場所を変えて第3の人生を送るタクシーもあるようです。タクシー専用車として設計され、22年間改良を加えながら作り続けたクラウン・コンフォート系は、100万キロ走行を基準に設計され、ジャパタクも同レベルの品質を確保しているとメーカーは自信を見せていますから、タクシー専用車は堅牢さが違います。

[2] 宮園の場合175台のタクシーを所有しているので×400万円=7億円ってこと、この数字が企業として大きいのか?小さいのか?は、私達にはよくわかりませんが…。
話変わって観光バスの値段は、ベーシックなもので1台4,000万円~豪華仕様は1億円という話で、一戸建ての高級住宅が連なって走っていると考えるとスゴっ!

[3] タクシーの走行距離は、通常の自家用車の1年分を1ヶ月で走るといわれるので、1年使えば12年落ちの中古車と同じです。これを毎日快調に走らせるにはメンテナンスが欠かせず、1年ごとの車検整備の間に、3ヶ月ごとにも法定点検があります。その他自主的に1ヶ月ごとのリフレッシュ点検で毎月整備工場に入庫して、整備士による点検とエンジンオイルなど消耗品の交換が行われます。高速道路を往復する大型トラックなどの100万キロ~とは一桁違いますが、一般道を中心に走って代替まで50~60万キロ走破まで使われて普通なので、車両を維持する費用は高額になります。

総括原価(支出)と運賃(収入)がイコールになるように調整

原価/収入の天秤のイラスト

総括原価が会社の支出にあたり、会社規模などにより総額や内訳はそれぞれ違います。最前線で働く、我々乗務員の給与を手厚くして人件費の割合が増えるのはありがたいことですが、かと言ってそれだけでは先を見据えた設備投資などが行き詰ることになるので、ここは社長以下経営層の手腕が問われるところです。古くなってガタガタのタクシーで営業しても、お客様も我々乗務員も好まないのは同じ気持ち、やはり新車に乗れば気持ちが良いし、仕事への意欲も高まります!

さて、収入のほぼ全てを運賃に頼るタクシー事業、「高い運賃」で「たくさん乗車」いただくのが一番良いのはいうまでもありません。特に収益の良くない(経営に行き詰りつつある)会社なら、少しでも高い運賃に設定して収入が増える設定を望みますが、そうすると順調に経営している会社は儲かりすぎてしまいます。他業界よりも収入が低いといわれ続けているタクシー業界ですから、儲かった分は「全て給料に割り当てろ」と言いたいところですが、高い運賃に乗り控えが起こってしまうと元も子もないわけで、このあたりのバランス感覚が難しいところです。

「能率的な経営における “適正な原価” …」ですから、能率的な経営が出来ていない会社を省いて、今後もつぶれずに継続できる標準的な経営状態にある会社の原価を算出の根拠として、そこに「適正な利益」を加えた額(支出)を見積って、運賃(収入)をイコールとなるように設定されます。ですから、大きな損失が出ない総原価方式でも、経営効率の悪いダメな会社は改善しないと淘汰されるということですね。

POINT
  • タクシー会社の支出(原価)= 収入となるように運賃を決める

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